なぜ現代人は太りやすい?“ため込む身体”の仕組みを知り、生活に活かすコツ

カラダ 2026/08/21 12 views

「食べ過ぎているつもりはないのに太る」「若い頃と同じ生活なのに体重が増える」。そんなふうに感じたことはありませんか?その背景には意志だけでなく、人間の身体に備わった仕組みと現代生活のミスマッチがあります

本来、飢えや危機から身を守るために働いてきた体内のさまざまな機能も、食べ物が豊富で身体を動かす機会が少ない現代では、太りやすさにつながることも。琉球大学大学院医学研究科教授の益崎裕章先生への取材内容をもとに、現代人が太りやすい理由と、今日から取り入れやすい工夫を紹介します。

人間の身体は“ため込む”ようにできている

食べ物がいつでも手に入るわけではなかった狩猟採集の時代、人間にとってエネルギーを身体にためることは、生き延びるために必要な力でした。益崎先生は「人間の身体は、飢えに備えて“ため込む”方向に非常にうまくできている」といいます。獲物が得られた時や食べられるときにしっかり食べ、脂肪として蓄え、飢えに備える。そうした身体の仕組みは、本来、命を守るために働いてきたものです。

しかし現代は、食べたいときにいつでも食べ物が手に入りやすい環境です。さらに、甘い飲み物や高カロリーな食品も身近に溢れています。昔なら生き延びるために役立った“ため込む力”が、現代では肥満につながりやすくなっているのです。
だからこそ、食べたい気持ちを根性で抑えることではなく、食べ過ぎを自然と防ぐ環境を整えることが大事です。
例)
□早食いを避け、食事は20分以上かけて食べる
□買い物前は空腹状態を避ける

など、このような小さな工夫で「ついつい食べ過ぎる・うっかり買い」を抑えられます。

ストレスに備える身体の仕組みが、食欲に影響する

ストレスを感じた時の身体の反応も、本来は危機から身を守るために備わる仕組みです。狩猟採集の時代は、敵の襲撃、食糧・水不足、寒さに耐える必要があるなど、命に関わる危機(ストレス)が多くありました。そうした状況に対抗するために、身体はホルモンや自律神経を働かせ、危機に対応してきました。

その働きに関わる代表的なホルモンの一つが、ストレスに対抗するホルモン「コルチゾール」です。コルチゾールは、危機に備えて血糖値を上げ、脳や筋肉に必要なエネルギーを確保する働きがあります。本来は生き延びるために欠かせない仕組みですが、現代のストレスや睡眠不足が慢性化しやすい環境では、内臓脂肪をためやすい方向に働くことがあります。

また、ストレスや不眠状態が続くと、満腹感や空腹感に関わるホルモンのバランスも乱れやすくなります。その結果、「お腹が空いているわけではないのに食べたい」「甘いものや脂っこいものが欲しくなる」といった状態につながることもあります。

益崎先生によると、「イライラや焦りを感じた時に、お腹が空いていなくても食べることで気持ちを紛らわせる『代理摂食』が起こりやすい」といいます。
だからこそ、現代のストレス対策は心の問題だけでなく、肥満予防にも関わります。ストレスをゼロにすることは難しくても、「食べる」以外の対処法を持つことも大切です。普段からストレスをケアしておくための例を参考に、自分の身体と心が落ち着く時間をつくってみましょう。

例)
□湯船につかる
□短時間でも歩く
□深呼吸をする
□できたことを記録して小さな達成感を得る

同じ生活でも、年齢とともに太りやすくなる

私たちの身体には、体温や血圧、血糖、食欲、睡眠などを一定の状態に保とうとする「恒常性維持機能」が備わっています。これは身体のバランスを保つために欠かせない働きですが、この機能は年齢とともに変化していきます。
20代までは多少の食べ過ぎや運動不足があっても、身体がなんとかブレーキをかけ、体重や体型を保てることがあります。しかし30代以降になると、その調整システムは少しずつ落ちていきます。若い頃と同じ食生活を続けているつもりでも、身体は同じようには処理できなくなっていることがあるのです。基礎代謝も同じように、20歳ごろをピークに、誰でも少しずつ下がっていきます。本来であれば、代謝の低下に合わせて食べる量も自然に減り、身体は変化に合わせてバランスを取ろうとします。ところが、食習慣や行動習慣が若い頃と変わらないままだと、体重が増えやすくなるのです。

その対策の一歩としてまず取り入れたいのは、以下の4つ

□体重を測る習慣をつける
 毎日でなくても週に数回、同じタイミングで体重を確認
□健康診断などで身体の変化を知る
 変化する身体の状態を知り、今の身体に合った食生活を送れているか、振り返ってみましょう。
□お菓子はテーブルやリビングなど目に入る場所に置かない
□甘い飲み物を常備しない

腸内フローラも太りやすさに関わる

体重は、単純に「食べた量」と「動いた量」だけで決まるわけではありません。食べたものをどれくらい吸収し、身体の中でどう使うかには個人差があり、同じものを食べても、太りやすさに違いが出ます。

この違いを左右する要素の一つが腸内フローラです。腸内フローラとは、人間の腸の中にすみつく多種多様な細菌の集まりのこと。いわゆる善玉菌・悪玉菌・日和見菌などがバランスをとりながら、消化・吸収や代謝、腸内環境の維持に関わっています。
腸内フローラのバランスが整っていると、栄養の吸収やエネルギーの使われ方を健やかに保つことにつながります。一方で、バランスが乱れると、本来なら身体の外へ出ていくはずの余分なエネルギーまで、取り込みやすくなることがあります。
だからこそ、腸内フローラを整える工夫をすることは、太りにくい身体づくりにつながります。
例)
□食物繊維を含む野菜、海藻、きのこ、豆類を取り入れる
□ヨーグルトや納豆などの発酵食品を摂る
□青魚や、えごま油、アマニ油などを取り入れる日をつくる
□ジャンクフードやファストフードは控えめにする
□動物性脂肪(ラード、バターなど)の摂り過ぎに注意する

便利な現代生活そのものが太りやすい環境に

現代の暮らしは、とても便利です。車で移動でき、エレベーターやエスカレーターがあり、仕事では座っている時間が長くなりがちです。沖縄では車移動が多く、日常の中で歩く機会が少ないと感じる人も多いかもしれません。
益崎先生は、「ホルモンや自律神経には日内リズムがあり、朝に活動のスイッチが入り、夜に向けてトーンダウンする仕組みが身体に刻み込まれています」と話します。
これは、太陽が昇ると活動し、日が沈むと身体を休めるという、原始的な生活に合ったシステムです。しかし現代は24時間明るく、スマホなどの深夜利用も増え、身体のリズムと現代の生活環境が大きくずれているのです。
そのため、下記のように、できるところから少しずつ生活のリズムを整えることで、肥満対策につながります。
例)
□起床時間と就寝時間をなるべく一定にする
□夜遅くに食べない・甘い飲み物を飲まない
□朝起きたら日光を浴びる
□日中に身体を動かす時間をつくる
□寝る前のスクリーンタイム(スマホ時間)を短くする

肥満は意志の弱さだけではない。だからこそ工夫できる

太りやすさには、身体に備わった仕組み、ストレス、年齢による変化、腸内環境、そして現代の生活環境など、さまざまな要因が関わっています。
原因が一つではないからこそ、対策も一つではありません。
大切なのは、「もっと頑張らなきゃ」と自分を追い込むことではなく、自分の太りやすい原因に気づき、できることから環境を整えていくことです。

肥満は意志の弱さだけで起こるものではないからこそ、意志の力だけに頼らずに、自分に合った小さな工夫を取り入れることが、無理なく肥満を予防する第一歩になります。


監修
益崎裕章先生
琉球大学大学院医学研究科教授。医学博士。肥満症、糖尿病、メタボリックシンドロームなど、生活習慣病の診療・研究に取り組む、肥満研究の第一人者。https://www.ryudai2nai.com/about/biography/


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