脂肪って、ナニモノ?
カラダ 2024/03/26 546 views
「脂肪」という言葉を聞くと、なんとなく“身体に良くないもの”とイメージする人は多いのではないでしょうか。確かに、必要以上に身体に脂肪が溜まってしまうと、心臓や血管の病気、生活習慣病にかかるリスクが上がると言われていますが、実際のところ脂肪はどんな役割を持っているのでしょう。
「実は、脂肪は身体にとって必要不可欠なんですよ」と話すのは管理栄養士の前原さやこさん。10年以上にわたって患者さんの生活習慣病改善やダイエットのサポートを行ってきた前原さんに、「脂肪」とはいったいどんなものなのか、脂肪を溜め込まないコツについて教えてもらいました。
脂肪にはどんな役割がある?
「脂肪は、身体にとって効率の良いエネルギー源。人は食べたものを身体の中で消化吸収し活動するためのエネルギーに換え、使いきれなかった分は脂肪として貯めておきます。また、食品からとる脂質は細胞の材料に使われていたり、ホルモンの材料でもあります。そのほかにも、ある種のビタミンの吸収を促してくれる効果もあるなど、とても大切な役割を担っています」。
身体に蓄えられる脂肪は大きく分けて、皮下脂肪と内臓脂肪の2種類。
皮下脂肪は、お腹や二の腕、お尻、太ももなど、身体のあらゆるところについていて、指でつまむことができるもの。身体を外部の衝撃から守るクッションのような役割や、身体の熱を溜め込んで保温する効果もあります。内臓脂肪は、内臓の内側についている脂肪のことで、CTスキャン検査でお腹を輪切りにした画像を撮影することで確認できます。内臓脂肪は、食べ過ぎや飲み過ぎによって蓄積され、必要以上に溜まってしまうと、動脈硬化や高血圧、高血糖といった生活習慣病になってしまったり、放置すると脳梗塞や心筋梗塞などの命に関わる病気を引き起こすリスクも高まります。
「太古の昔、食糧が貴重だった時代は身体に脂肪を溜めることで飢えをしのいだり、脂肪による断熱効果で冷えから守るなど、命をつなぐために脂肪はとっても大事な存在だったんです。ですが現代は“飽食(ほうしょく)の時代”と言われていて食べ物が世に溢れていますから、飢えをしのぐ必要はなくなりました。逆に食べすぎて脂肪を溜め込んでしまうことで病気の引き金になることもあるのです」と前原さん。時代の変化によって悪者とされるようになった脂肪。身体にとって必要なものではあるものの、必要な量を超えて蓄積してしまうと身体に悪い影響を与えてしまいます。
では、脂肪を溜めすぎない・または減らすためにはどうしたら良いでしょうか?前原さんに生活のヒントを聞きました。
脂肪を減らす生活のヒント
前原さんによると、脂肪を減らすポイントは食生活にあるそう。
「身体は、溜め込んだ脂肪をエネルギーとして使うことで燃焼できます。健康のためにはもちろん運動も食事もどちらも大事ですが、脂肪を燃焼するために重視したいのは食生活なんです」。
実は運動で脂肪を減らそうとするとかなりハードな運動が必要だそう。
「初心者や運動習慣のない人がいきなり運動量を増やすのは難しいため、“脂肪を減らすために運動する”と考えるのではなく、普段からエレベーターよりも階段を使う、一駅分歩くなど、日常の中で無理なく消費を増やす程度でOK。それに加えて、毎日の食事の選び方や量を工夫することが、脂肪を燃焼する近道なんですよ」
毎日の食生活に工夫を加えることで、脂肪を溜めにくく、減らしやすい習慣に。さっそく内容をチェックして、できることからはじめてみましょう!
①1回の食事は20分以上かける
一般的に噛む回数は20〜30回が理想と言われますが、食事にかける時間をある程度一定に保つことも痩せるポイント。それには、食欲をコントロールしてくれる「満腹中枢」という神経が関係しています。満腹中枢は、食べ始めてから20分ほどで満腹感を感じ、食欲を抑える司令を出してくれます。そのため、早食い傾向にある人は、満腹中枢を刺激できず食べる量が多くなってしまうので要注意。
②睡眠は6〜7時間以上とる
睡眠時間をしっかりと確保できている人はGood。睡眠不足は、食欲UPに繋がってしまいます。また、寝ている間に成長ホルモンをしっかりと分泌させることで、睡眠中の脂肪燃焼時間をしっかりと確保することができると言われています。
③水分をしっかりとる
脂肪を減らしやすい習慣に、十分な水分摂取が挙げられます。水やお茶などを飲む量が少ないと血液中の水分も不足してしまい、酸素や老廃物をスムーズに流せなくなってしまう要因に。水分をしっかりと取ることで代謝の効率が良くなると言われているので、1日あたり体重×30ml(体重60kgの場合、1.8ℓ)水分をとるのがおすすめです。
④良質な油を選ぶ
脂肪を増やさないためには、良質な油を選ぶことがポイント。菓子パンや洋菓子に含まれるマーガリンやショートニング、ファットスプレッドなどの合成油脂、また、甘いドリンクに含まれる植物性油脂などは、とりすぎると腸内環境が乱れやすくなると言われています。腸内環境が良いと、スムーズに栄養を消化吸収し老廃物を便としてしっかり排出することができますから、脂肪が蓄積しにくい体質へと導いてくれます。また、良質な油を選ぶなら、亜麻仁油や、エゴマ油などは、エネルギーとして使われやすいので、身体に蓄積しにくいと考えられています。
⑤正しい方法で体重を測る
実は体重を計る際にはポイントがあります。まず、測るタイミングは1日1回、毎日同じ時間帯・同じ条件で測ることが大切。おすすめは、朝起きてトイレを済ませてからのタイミング。そしてもう一つは、体重の変動は毎日あれど一喜一憂せず、1〜2ヶ月といった長期スパンで変動の傾向を見ること。全体を俯瞰して見て減少傾向であればOKです。また、体重だけでなく体脂肪率にも注目しましょう。例えば、体重は減っていても体脂肪率が変わらない状態が続くのは、筋肉が減っている可能性もあるため、痩せ方として見直しが必要です。人によって体質は様々ですが、食生活を整えることで体質が改善し、体重と体脂肪率がじわじわと変化してくるパターンが多いので、長い目で見て続けましょう。
⑥発酵食品を積極的にとりいれる
納豆、味噌、乳製品(ヨーグルト・チーズ)といった発酵食品は腸の中の善玉菌を増やし、腸内環境を整えてくれます。腸内環境が整っていると、便秘を予防・解消できますし、便を溜め込まないことは脂肪を溜め込まない体質づくりにつながります。脂肪を減らしたいがなかなか痩せにくいと感じている人は、腸内環境を整える食品を積極的に摂ることをおすすめします。
⑦自分の適切な食事量を知る
適切な食事量を知ることは、余分な脂肪蓄積を防ぐことにつながります。
基本的には、1日3食食べ、食欲UPや食べムラにつながる欠食は脂肪も燃焼しにくくなるため避けましょう。
脂肪を蓄えないためには、食事の基本である一汁三菜と言われるように、「ご飯・汁もの・おかず」を組み合わせることでバランスよく栄養をとり、その上で、量をコントロールすること。カロリー計算は取り入れるのが難しいため、私たち栄養士が食事相談の際に参考にしている「手ばかり栄養法」がおすすめです。これは、例えば肉や魚、豆腐などのタンパク源の1日の目安は、両手のひらに軽く乗る程度、両手にいっぱいの緑黄色野菜、そのほかの野菜やきのこ類は両手に2杯分食べるという風に、食事の目安量をシンプルに教えてくれるのでおすすめです。
※リンク:「手ばかり栄養法」いわさきグループ https://www.foodmodel.com/
いかがでしたか?いくつかのポイントを紹介しましたが、中には聞いたことがあるという項目があるかもしれません。身体は、1ヶ月で細胞の75%が入れ替わると言われています。バランスのとれた食生活をまず1ヶ月続けてみることが脂肪を燃焼していく土台づくりにつながります。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
脂肪対策!パターン別おすすめウェブ記事
kenko ISLANDで紹介してきたたくさんの記事の中から、ダイエットに役立つおすすめ関連記事をご紹介します。脂肪燃焼には自分にぴったりの方法を見つけて、ぜひ取り入れてみてくださいね。
①食事で太らないコツを知りたい!
→「健康で美しいカラダを手に入れよう!太らないコツ 〜食事編〜」
https://www.islandweb.okinawa/hutoranaikotsu1/
②良い油の取り入れ方を知りたい!
→「油の上手な選び方、使い方」
https://www.islandweb.okinawa/abura_erabikata/
③日常生活で、ながら運動を取り入れたい!
→「健康で美しいカラダを手に入れよう!太らないコツ 〜運動編〜」
https://www.islandweb.okinawa/hutoranaikotsu2/
④運動効率をアップしたい人
→「体幹のインナーマッスルを鍛えて運動の効率を上げよう!」
https://www.islandweb.okinawa/innermuscle/
——————————————————————————————
監修:前原さやこさん
管理栄養士。10年間の病院勤務で、2700名以上に食事指導で健康をサポート。自身も産後のダイエットに取り組み、食生活を変えたことで減量だけでなく長年悩んでいた偏頭痛も改善。現在は女性を対象に、無理なく健康的に食べて痩せるダイエット法を用いた食事管理やアドバイスをオンラインで実施している。
〈Instagram〉sayako_fooddiet