油の上手な選び方、使い方

栄養 2023/11/13 1013 views

オリーブオイルやごま油、サラダ油など、たくさんの種類がある「油」。炒め物や揚げ物など使い方も様々ですが、実は油の特徴に合わせて使うことで、おいしさのバリエーションが広がり、良質な栄養もとることができます。そんな、油の上手な選び方や使い方を、管理栄養士の平良麻奈美さんに教えてもらいました。

油ってどんな種類がある?

そもそも油とは身体に良いものなのでしょうか?平良さんによると、「油(脂質)は、身体の細胞や血球をつくる材料でもあり、脳や神経の働きを助けてくれる大切なもの。身体に欠かせない栄養素である三大栄養素のひとつです。適切に取り入れることで健康維持につながりますよ」とのこと。もちろん取りすぎてしまえば肥満や生活習慣病の原因にもなってしまうので、特徴を知った上で上手に使い分けることが大切です。

油は、大きく分けると、図のように植物の実や種から取れる植物性と、牛脂やラードなどの動物性があります。また、トーストや料理に使われるマーガリンやお菓子作りに活用されるショートニングは加工油脂と呼ばれ、食用の油を加工してつくられます。

それぞれの油の特徴や使い方を知ろう

たくさんある油の中から、一般的に広く使われる植物性の油について、特徴や使い方を伺いました。

●サラダ油
大豆や菜種など様々な食用油を加工して作られたもので、サラダなどの加熱をしない料理にも使えることから「サラダ油」と名付けられたと言われています。味や匂いにクセがなく、サラサラとしているのが特徴で、低温でも固まらないのでドレッシングなど、冷蔵庫で冷やしても使えます。
味・香り:なし
相性の良い料理:炒め物、サラダなどの生ものもOK

●なたね油
アブラナ科の植物からとれる油。匂いにクセがなく、熱に強く酸化しにくいため炒め物や揚げ物にも向いています。
味・香り:なし
相性の良い料理:炒め物、揚げ物

●オリーブオイル
オリーブの実からとれた油。オリーブ特有の香りが料理の味を引き立ててくれます。熱にも強いので、炒め物や煮物、また、香りを活かしてドレッシングなど幅広く使えるのが特徴です。
味・香り:オリーブ特有の香りと味があり、品種によっても様々。
相性の良い料理:炒め物、サラダなど

●ごま油
炒め物の香り付けやドレッシングなどによく使われます。加熱すると酸化しやすいので、料理の最後に火を止めてから使うと〇。購入する際は、ラベルの表示をチェック。「圧搾」との表示があるものは、圧力をかけて油を搾るため素材由来の栄養成分が残りやすいと考えられています。
味・香り:香ばしいごまの香り
相性の良い料理:炒め物や煮物の香り付け、ドレッシングに

●えごま油
えごまの実からとれる油。血液をきれいにしてくれるオメガ3(αリノレン酸)が豊富。熱に弱いので、火を使わない料理に向いています。こちらも「圧搾」との表示があるもがおすすめです。
味・香り:特になし
相性の良い料理:サラダなどの生もの

●亜麻仁油
リネン生地の原料でもある亜麻の種からとれる油。動脈硬化予防や免疫力アップに良いオメガ3(αリノレン酸)が豊富。えごま油と同じく、熱に弱い。
味・香り:特有の香りあり
相性の良い料理:サラダやスープなど

●こめ油
玄米の米ぬかからとれる油。こめ油の多くは国産の原料で作られているので、原料にも安心のものを使いたいという人におすすめです。熱しても酸化しにくいのが特徴で、油の成分である
脂肪酸のバランスが良く、良質な油として知られています。揚げ物に使うとサクッと仕上がり、食べてももたれにくいタイプです。
味・香り:特になし
相性の良い料理:炒め物、揚げ物、サラダなどの生ものも◎

●ココナッツオイル
「中鎖脂肪酸」という成分が多く、一般的な油よりも消化吸収が早いのが特徴。20度以下になると固まるという性質があります。
味・香り:あり。※香りを抑えたオイルもあり
相性の良い料理:炒め物、サラダなどの生ものも◎

MCTオイル
ココナッツなどのヤシ科に多く含まれる「中鎖脂肪酸」だけで作られた油。消化吸収が早く、脂肪になりにくいと言われており、病院食にもよく使用されている油です。熱に弱いので基本的に加熱せずに使うのがポイントです。
味・香り:特になし
相性の良い料理:サラダなどの生ものや、スープなどの仕上げに

油の特徴

油を選ぶポイントは?

油を選ぶ上でどんなことに気をつけたら良いのか、平良さんに3つのポイントを教わりました。ちなみに平良さんが家庭で愛用しているものは、米油、オリーブオイル、ココナッツオイル(液体)、料理のアクセントとしてごま油も使っているそうです。ポイントを詳しく見てみましょう。

①酸化しにくいもの

オリーブオイル、こめ油、ココナッツオイルは酸化しにくいと言われています。酸化とは、空気や光、熱と反応して起こる変化のことで、料理の風味を損なうことや食中毒の原因にもなると考えられています。また、大量にとることで内臓へ負担がかかったり、動脈硬化といった健康を害する恐れもあるので注意しましょう。製造方法もチェックしてみましょう。油の酸化や劣化が起こりにくいとされる一番搾りや溶剤を加えずに抽出した油を選ぶのがおすすめです。ラベルに「圧搾」と書いているものが〇。

②ボトルサイズは小さめのものを

油はできれば開封から1〜2 ヶ月で使い切りたいもの。それ以上長く使っている人は、小さめのボトルを選ぶのがポイントです。油は空気に触れると酸化して香りが悪くなったり、鮮度が落ちることで動脈硬化などの要因になるとも言われています。できるだけ新鮮なうちに使い切れるようにしましょう。

③使い道に合わせて

炒め物、揚げ物、サラダなど、幅広い料理に油を使いたい人は、加熱にも生食にもマッチするオリーブオイルやこめ油を使う、または料理はあまりしないけれどサラダのドレッシングなどに使いたい人はオリーブオイルやごま油を使うなど、好みや使い道に合わせてチョイスしましょう。

ギモンを一気に解決!アブラを知るQ&A

ここでは、普段何気なく使っている油について、ちょっと気になるギモンをQ&A方式で紹介します。

①揚げ油は何回まで使っていいの?

できれば1回の使い切りにしてほしいのが本当のところ。揚げ油は熱したり空気に触れたり、食材が入ることで「酸化」してしまうためです。時間が立つほど酸化は進んでしまうので、1度きりか、翌日なら2回まで使っても良いかなと思います。その場合は、1度使ったら衣などを取り除きキッチンペーパーで濾しておきましょう。
何回か揚げ油を使った際に、煙が出る・油に粘り気がある・色が濃い、などの特徴が見られる場合は、かなり酸化が進み、古くなっている可能性が高いため、使用は控えましょう。

②揚げ物に使った油、どう捨てたらいい?

排水に流すのはNG。環境破壊の恐れや、排水管がつまりやすくなってしまうためです。
油を捨てるために、油を固める薬剤も市販されていますが、私は使い古した新聞紙か古い布きれなどに油を含ませて、燃やすゴミとして出しています。油を捨てるときは、十分に冷めた状態で行うことを忘れずに。

③油はどこで保管するのが一番?

冷暗所が一番ベター。冷暗所とは、なるべくすずしく、光の当たらない暗いところを選びましょう。例えば、キッチンのシンク下の棚のような、扉で開け閉めする場所だと光を遮り比較的すずしく保たれているのでおすすめです。コンロ脇といった火の近くや温度の高くなるところには置かないようにしましょう。

④油の使用期限はいつまで?

未開封であれば、プラスチック容器の場合は製造されてから1年、遮光瓶であれば2年と言われています。ただ、開封してから1〜2ヶ月以内に使うのが理想です。
開封してから何ヶ月も使っているという人は、小さめのサイズを買うのがおすすめ。小さな容器であれば使い切るまでに期間が開かないので、比較的新鮮な状態で使い終えることができます。

⑤レシピに書いてある油の「適量」ってどのくらい?

もちろん料理にもよりますが、一般的にフライパンに焦げが付かないために使うので、フライパン全体に馴染む程度がベター。食材が油に浸ってしまったり、逆にフライパン全体に油がまわっていないと火の通りにムラがでたり、焦げやすくなるので注意を。油がまわってサクっとさせたい人や、油の風味や油っぽさを好まない人もいるので、好みに合わせてフライパンに馴染む程度と考えましょう。

さまざまな油の特徴を踏まえつつ、普段つくる料理や好みに合わせてぜひ日常に取り入れてみてくださいね。


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監修:平良 麻奈美さん

予防医学アドバイザー、食育インストラクターの資格を持つ管理栄養士。子どもたちや家族の栄養を考えた食育のアドバイスや時短料理のレッスン、麹作りや味噌玉作りなどのワークショップを開催している。
https://www.instagram.com/mamahakazokunoeiyoushi/

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