知っておきたい、野菜の下処理方法

栄養 2023/02/10 3184 views

アク抜き、下茹で、板ずりなど、料理をするときに野菜の下処理をしていますか?食材の下処理をするメリットや、その方法について管理栄養士の山里瑠美さんにお話を伺いました。普段の食事をワンランク上の味に仕上げるために、適切な処理方法を学んで、取り入れてみてください。

下処理ってなんで必要なの?

「野菜の中にはアクやえぐみ、臭みのあるものがあります。そうした野菜は、適切な下処理をするととてもおいしい料理に仕上がりますが、下処理をしないままだと食べにくさが前面に出てしまいます。せっかくおいしく食べる方法がある上に、その野菜ならではの栄養素がとれるわけですから、普段の料理でぜひ取り入れてほしいですね」。

山里さんがこう話すように、下処理は野菜をおいしく食べるための一つの知恵。そして下処理の方法は「下茹で」や「板ずり」など、さほど手間がかからないものです。さらにすべての野菜に下処理が必要なわけではなく、そのまま調理できるものもたくさんあります。

そこで、山里さんに下処理が必要な代表的な野菜を「葉物編」「果実編」「根菜編」に分けて教えてもらいました。

下処理方法(葉物編)

ほうれん草
品種改良されたサラダ用のほうれん草は生でも食べられますが、基本的には調理前に、お湯で茹でる「アク抜き」が必要な野菜です。「ほうれん草のアクの正体であるシュウ酸は体に入るとカルシウムと結合し無害化しますが、カルシウムと結合して結石を作ることで尿路結石症のきっかけになったり、体に必要なカルシウムの吸収を妨げたりするので、生で食べるのはおすすめできません。シュウ酸は水溶性で、熱を加えると分解・消失する成分なので、たっぷりのお湯で茹でると少なくすることができます」と山里さん。ちなみに、色が薄いキャベツや白菜はシュウ酸が少ない傾向があります。小松菜もシュウ酸が少ないので、下茹での必要がなく生のまま調理可能です。葉野菜以外に、筍やブロッコリーはアクが強めなので下茹でが必要です。

下処理方法(果実編)

きゅうり
最近のきゅうりは品種改良によって苦みも軽減されていますが、きゅうりはもともと皮の下に、水や養分などが流れる管を持っています。この中には苦味や渋味の元になる「ギ酸」というアクが存在します。この管を傷つけて管からギ酸を出し、苦みを軽減するために行う下処理が「板ずり」。塩をまな板に広げてきゅうりを転がし、水で洗う下処理方法です。板ずりのもう一つの目的は、表面組織に傷をつけてそこに食塩が入ることで、緑の色素が鮮やかに保たれるほか、調味料が染み込みやすくなるという効果もあります。また、灰汁を抜く目的で、きゅうりのヘタを切り落とした後、ヘタと実の切り口をこすりあわせるという下処理法もあります。

ゴーヤー
綿と種を取り除いてカットした後に塩でもむ「塩もみ」が一般的な下処理方法です。苦みを取るために行いますが、「砂糖でもむ」という方法もあります。甘みがつくだけでなく、高血圧で塩分を控えている方にもおすすめの方法です。砂糖を使う場合は、もんだ後、洗わずに調理するとより甘みを感じられます。

下処理方法(根菜編)

大根
今が旬の大根は、下茹でがポイント。大根特有の臭みや苦みなどは、米のとぎ汁で下茹ですると食べやすくなるといいます。「大根のアクは主にシュウ酸です。とぎ汁に入っているカルシウムが、大根から溶け出したシュウ酸を吸着し、大根に戻るのを防ぎます。また、大根に含まれる消化酵素がとぎ汁のでんぷんを分解させることで大根に甘味を与えてくれますよ」と山里さん。とぎ汁の代わりに生のお米を大さじ1杯くらい入れて下茹でしてもOKです。

ゴボウ
ゴボウに含まれる強いアクの成分は、コーヒーにも含まれるクロロゲン酸というポリフェノールの一種です。アク抜きをしたほうが他の食材へ色が移るのを防ぎ、料理の見栄えも良くなります。ただ、ゴボウ特有の香りは料理のおいしさを引き立てるので、アクは取りすぎず風味を残すとおいしく仕上がります。アクが強い皮の部分を薄くむいて刻み、水で30秒程度さらせばアク抜きOK。皮は包丁の背や布巾で軽くこすればカンタンにむくことができます。また、水にさらすときは、流水だと風味が損なわれるので、ボウルに張った水につけるようにしましょう。黒く変色するのが気になる場合は、薄い酢水でさらすのもおすすめ。ゴボウを買うときは、土付きのものを選ぶと乾燥していないので風味が保たれていて、おいしく食べられます。

少し手間をかけるだけで料理の仕上がりも良くなるので、ぜひやってみてくださいね。

山里 瑠美先生 
在宅訪問管理栄養士。日本栄養士会認定栄養ケア・ステーション「いのり」の責任者で、在宅での療養や介護が必要な人やその家族へ栄養に関するアドバイスを行う。沖縄調理師専門学校では講師として、食品の特性を学び、素材を活かす知識を身につけるための「食品学」を教える。

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