疲れって一体ナニ?

何かと忙しい現代人は「疲れた!」が口癖になっている人もいるのでは?でも疲れの正体って一体なんなのでしょう?身体をたくさん動かしたのが原因?精神的な疲れ?パソコンやスマホの使いすぎ?そんな疲れに関する素朴な疑問について、また有効的な休み方について読谷村診療所の多鹿昌幸(たじか まさゆき)先生にお話をうかがいました。

疲労と疲労感は別。夢中になって疲労感がない時は要注意

当たり前のことですが「疲れた〜」という言う時は、誰もが「疲労感」を感じたからそう言います。ですが、逆に本当は疲れているのに疲労感を感じないこともあります。

そもそも疲労というのは身体や心に負荷がかかり、身体的になんらかの障害や機能低下が見られる状態のこと。症状の例としては、注意力が散漫になったり、いつもはできているのに考えても自分の考えうまくまとまらなかったり。頭痛や肩こりがひどくなるといった症状が出ることもあります。こうした症状は、言ってみれば身体や心からの「休んで〜!」というサイン。こんな時はしっかりと睡眠をとって休む必要があります。

日常的な疲労のほとんどは、一晩眠ることで回復しますが、「毎晩それなりに眠っているのに疲れがとれない」という状態が続き、生活に支障が出るほどの疲労感が半年以上続く場合は「慢性疲労症候群」の可能性も。この場合は病院の受診をおすすめします。 一方で、本当は疲れているはずなのに疲労感を感じていない場合は要注意。これは本人では気づけないことがあるので、周りの人たちが気づいてあげることが大切です。例えば受験勉強に必死になっている時、焦りやプレッシャーで疲れていることを感じないまま睡眠時間を削って勉強してしまったり、仕事で大きなプロジェクトを任され、成功のことだけを考えて残業や休日出勤などオーバーワークをしたり。この状態を放っておくと病気になったり、最悪な場合は過労死に至ることもあります。家族や友人、職場で一緒に働く人たちが「なんだかいつもと違う…?」と感じたら、きちんと休めているかどうか確認するようにしましょう。

休む時はゆっくり過ごすこととアクティブに楽しむこと

疲労には3つの種類があります。

①「肉体疲労」
激しい運動や身体を継続的に動かす仕事をすることにより、身体や身体の一部がだるくなるのが肉体的疲労です。長時間座りっぱなしのデスクワークも実はこれに当たります。

②「脳疲労」
これはパソコンやスマホを長時間使っている現代人のほとんどが当てはまることかもしれません。大量の情報を脳が処理しきれずに、脳の働きが一時的に悪くなった状態です。

③「精神疲労」
ストレスや心理的な負担により、不安感やイライラ、やる気の低下などが起こります。

疲れたと感じる時は、上記の疲労の種類が複合的に混ざり合っていることがほとんど。ただ、その中でどの種類の疲労が一番強いかによって、休み方を変える必要があります。

大前提として、どの種類の疲労であっても睡眠をしっかりとることは必要です。その上で、疲れの種類別のおすすめの休み方としては、「肉体疲労」に対しては、読書や音楽鑑賞、入浴など、自宅などでゆっくりと安静に過ごすのが有効です。

逆に、「精神疲労」に対しては遊び感覚でできるスポーツをするなど、少し身体を動かすことでストレス解消や心理的な負担を一時的に取り除くことができます。海や森などへ行き、自然の中でアウトドアを楽しむことは「脳疲労」だけでなく、「精神疲労」を癒すことにもつながります。

自分の疲れの原因を知り、そのときどきで必要な休息の仕方で対処することが大切です。

糖質ゼロ、糖類ゼロ、カロリーゼロの食品ってどうなの?

スーパーで見かける「糖質ゼロ」や「糖類ゼロ」、「カロリーゼロ」と表示された食品。ダイエットなどの観点から、そのような食品を手に取る人もいるかもしれません。それぞれの違いや、本当にゼロになるのかといった疑問、効果的な食品の選び方を管理栄養士の山里さんに教えてもらいました。

そもそも糖質、糖類、カロリーって何?

パンやごはん、麺などに含まれる炭水化物の一部である「糖質」は、人が生命維持をしたり身体を動かしたりするエネルギー源です。糖質はいくつかに分類することができ、ブドウ糖やグルコース、ショ糖などの「糖類」のほか、キシリトールなどの「糖アルコール」、オリゴ糖などの「多糖類」、スクラロースなどの「合成甘味料」などがあります。体内に入った糖質の多くは、糖類であるブドウ糖に分解されることでエネルギー源になります。

ここでもうひとつ、糖質のはたらきを理解するうえで知っておきたいのが、「カロリー」という言葉。カロリーは本来、熱量(エネルギー)を表す単位「キロカロリー(kcal)」のことですが、「エネルギー」と同様の意味でも使われます。

「人が生きるために必要不可欠なエネルギー(カロリー)は、糖質を含む『炭水化物』のほか、『たんぱく質』、『脂質』の3大栄養素から作ることができます。穀物やイモ類などに含まれる『炭水化物』と、肉や魚などに含まれる『たんぱく質』は1gあたり4kcalのエネルギーを作り出し、植物油などの『脂質』は1gで9kcalのエネルギーを作ることができます」。

では、糖質やエネルギーは1日にどのくらい摂るといいのでしょうか。「糖質やエネルギーの1日の必要量は、『日本人の食事摂取基準2020』を参考にするといいと思います。P84に性別、年齢、身体活動レベルごとの1日の推定エネルギー必要量が一覧になっているので、まずは自分がどのくらいエネルギーが必要かを知りましょう」と山里さん。例えば、30〜49歳の活動レベルⅡ(Ⅰは寝たきりなどほとんど自宅で過ごす人、Ⅲはスポーツの部活をしている人やアスリートなど、日常的に激しい運動をしている人という分類です。多くの人は活動レベルⅡに当てはまります)の男性の推定エネルギー必要量は2,700kcalだと分かります。

山里さんによると、1日のエネルギー必要量のうち、何%をぞれぞれの3大栄養素から摂取したほうがいいのか基準があるのだといいます。中でも糖質を含む炭水化物は推定エネルギー必要量の50%〜65%で摂取することが望ましいです。炭水化物はエネルギー源になる「糖質」と、ほとんどエネルギーにならない「食物繊維」に分けられるので、炭水化物から得るエネルギー必要量と、糖質から得るエネルギー必要量は同様です。計算例は下記のとおりです。

【30〜49歳の活動レベルⅡの男性の場合】
推定エネルギー必要量2,700kcalのうち、1,350kcal(50%)分は炭水化物から摂取することが望ましい。

1,350kcal(1日に必要な炭水化物のエネルギー量)÷4kcal(炭水化物1gあたりが作り出すエネルギー量)=330g(1日に摂ると丁度いい炭水化物の量)

30〜49歳の活動レベルⅡの男性は、330gの炭水化物が必要だと分かりました。普段の食事で必要なエネルギー量や炭水化物(糖質)の量が大幅に超えていないかチェックしてみましょう。

※身近な食品にどのくらいの栄養素が含まれているかは、文部科学省の「食品成分データベース」を参考にしてみましょう。
https://fooddb.mext.go.jp/index.pl

糖質ゼロ、糖類ゼロ、カロリーゼロとは?

健康維持のために「糖質ゼロ」や「糖類ゼロ」、「カロリーゼロ」と表示された食べ物や飲み物を選ぶ方もいますが、そのような食品には、糖質などが本当に含まれていないのでしょうか。実は消費者庁の食品表示基準では、100gまたは100mlあたりに含まれる糖質や糖類が0.5g未満の場合は「ゼロ」と表記することができます。また、「カロリーゼロ」と表示された食品も全くカロリーが含まれていないのではなく、100gまたは100mlあたりに含まれるエネルギー(カロリー)が5kcal未満なら「カロリーゼロ」という表記をしてもいいのです。

気を付けたいのが「糖類ゼロ」の食品を選ぶときです。「糖類ゼロ」は砂糖を使っていないだけで、中にはデンプンなどの他の糖質が多く含まれていることもあります。「ゼロ」と表記された食品だからと多めに食べてしまい、1日の炭水化物の適正量をオーバーしていたということにならないように気をつけましょう。

もうひとつ知っておきたいのは、「カロリーゼロ飲料」などは、エネルギー(カロリー)を下げるために、キシリトールやスクラロースなどの食品添加物を使っているものも多くあるということ。日本で購入できる食品添加物は基準値以内に収められていますが、キシリトールなどの「糖アルコール」は小腸で吸収されにくく、多く摂取することでお腹が緩くなることもあるので、食べ過ぎはNG。また、ダイエット飲料やチューインガムなどに使われる食品添加物「アスパルテーム」は発がん性の可能性があることをWHOも発表しているので、やはり摂りすぎは避けたほうがいいです。

「〇〇ゼロ食品」と上手に付き合おう

「普段食べている食品を『糖質』や『糖類』、『カロリー』がゼロと表示された食品に置き換えて、糖質やエネルギーをコントロールしてもいいのですが、完全にゼロではないことを知っておきましょう。油断して多めに食べてしまうと、血液中のブドウ糖の濃度が異常に高くなってしまう『高血糖』の状態になり、中性脂肪に変化して脂肪組織に蓄えられることで肥満の原因になる可能性もあります。生活習慣を予防して健康的な生活を送るためには、栄養バランスが大切。『○○ゼロ』の表示を過信せず、栄養素の成分表示をしっかり確認して、普段の食事と合わせてどのくらいのエネルギーや糖質を摂っているかを把握できるといいですね」

山里瑠美さん
在宅訪問管理栄養士。日本栄養士会認定栄養ケア・ステーション「いのり」の責任者で、在宅での療養や介護が必要な人やその家族へ栄養に関するアドバイスを行う。沖縄調理師専門学校講師も務める。

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